宿の現場から
宿を運営して分かった、観光サイトに必要なこと
自分たちのサイトをつくるのは、思っていた以上に難しいことでした。私たちはトマムでWakaranai Lodgeを運営しています。そこに込めた情熱や創造性がサイトにも表れましたが、ときには事業そのものとお客様に必要な情報を切り分けるのが難しくなりました。
サイトと事業は、同じものではありません
自分でサイトをつくると、アイデア、写真、物語、個性をすべて載せたくなります。それらは小さな事業の大切な魅力です。ただ、お客様は事業者側の頭の中にある地図を持って来るわけではありません。
個性を残しながら、次の判断を分かりやすくすることが大切です。ここはどんな場所か。誰に合うのか。どこにあるのか。どう行くのか。いくらかかるのか。予約ボタンの先で何が起きるのか。
よくある問題は、情熱が足りないことではありません
私たちが見る観光サイトの多くは、情報が見つけにくく、デザインが古く、ページの流れが分かりにくくなっています。日本語と英語のページを行き来し、雰囲気は分かっても実用的な情報が見つからない。予約ボタンを押すと、日本語だけのページや使いにくいフォームに移動してしまう。
小さな事業者がうまくできていないのは、仕事を大切にしていないからではありません。事業を運営しながら、原稿、写真、構成、更新、ツールの管理まで行う時間がないのです。
海外のお客様には、その場所への地図が必要です
北海道で海外のお客様からよく聞くのは、距離や交通についての質問です。駅からどれくらいか。車がなくても行けるのか。次の目的地とはどうつながるのか。日本はアメリカやヨーロッパと街のつくられ方が大きく違うため、地元の人にとって当たり前の情報がそのまま伝わるとは限りません。
アクセス、現実的な移動時間、地図、季節ごとの状況、予約後の流れは、単なる補足情報ではありません。安心して予約するための体験の一部です。
雰囲気が伝わると、価格にも納得してもらいやすくなります
サイトを見た瞬間に場所の雰囲気が伝わることは大切です。自分がそこで過ごす姿を想像できれば、同じような価格でも納得しやすくなります。反対に、雰囲気が分からず、価格とのつながりも見えなければ、そこで離脱してしまいます。
さらに、予約まで進んだのに日本語ページを行き来したり、使いにくいフォームに移動したりすれば、AirbnbやBooking.comに戻ってしまうこともあります。サイトには雰囲気と機能の両方が必要です。
Raven Outdoorsのサイト制作で、導線の変化を実感しました
Raven Outdoorsは、以前は主にSNSと他のガイド・会社からの紹介に頼っていました。私たちは富良野を拠点とするスキー・フライフィッシングガイドの仕事を分かりやすく伝え、地域の検索で見つけてもらえるサイトを制作しました。
公開後は重要な地域検索で上位に表示され、問い合わせが増え、直接予約が60%を超えるようになりました。紹介経由で発生する手数料を抑え、予約1日あたり約10%多く事業に残せることも、直接予約の大きな意味です。
すべてを作り直すことが正解とは限りません
新しくないという理由だけでサイトを交換する必要はありません。全体にまとまりがあり、内容も良く、少しの改善で十分なら、必要な部分だけを直す方がよい場合があります。
ただし、サイトが事業の価値を伝えることを妨げているなら、できるだけ負担の少ない形で土台を整えるべきです。これから成長する北海道の観光市場で、今のうちに分かりやすい情報と予約までの流れをつくることは、長い目で見て大きな力になります。
